人生にはどうにもならないことがある

田淵幸一

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子供は親を騙す方法を知っている。

小学生の低学年ともなれば、親が自分のことをかわいがっていると感づいているはずだ。

もちろん、いつもワガママばかりではダメ。でも、いざという時には子供なりの誠心誠意を尽くせば、大抵のことは許されると知っている。

そんな少年時代の私は“あの出来事”が起きたことで「大人の壁」を知った。

世の中には、一度決まったら絶対に覆(くつがえ)すことができない事があるんだと。

「田淵の電撃トレード」

大好きだった田淵が西武にトレードされる。

絶対にイヤだった。親父に何度もどうにかならないかと迫った。

もちろん親父にはどうすることもできない。そう、「あぁ、お父さんにもできないことがあるんだ」とある種の絶望を感じたのもあの出来事があったときだ。

大人は怖い。本当にそう思った。

でも逆に、少し大人になった瞬間だったのかもしれない。

社会のルールを肌で感じた瞬間・・・

世の中には、どんなにイヤでも無条件に受け入れなければいけないことがある。

そして漠然と思ったものだ。人生って、自分の思い通りにはいかないものなんだと。

 

ただ、あの出来事のあと、その何倍も掛布のことが好きになった・・・